心理学が全く効かない!

橋本自身が、この身体の問題が原因で、心を大きく崩してしまったことがありました。
それは本当に地獄の苦しみでした。

心理学を専門に学び、自己を深く理解し磨き、心が強くなったはずなのに、その心理的アプローチが全く効かなくなり、心の症状は悪化していきました。心の専門家なのに、自分の心がコントロールできない、この絶望と苦しみの渦中は本当につらかったです。

心理学や精神病理の本を山のように読み、必死で自分の症状を理解しようとしましたし、様々な心理メソッドも試しましたが、どれも効果はありませんでした。

どうしたのだろう、なんでこんなに弱くなってしまったのだろうと、何度も自分を責めました。
しかし、問題は、「心」ではなく、「身体」にあったのです。

「心」のアプローチでできるのは全体の半分までであり、もう半分は身体の問題から
解決する必要があったのです。

例えば、フェリチンという、貯蔵鉄の数値があります。
一般的な血液検査で調べる血清鉄は、よほどのことが無い限り正常であることが多いので、
多くの人は問題なくパスしてしまいます。

しかし、このフェリチンという数値、表面の血清鉄が正常でも、特に女性は数値が低いことが多々あるのです。そして、このフェリチンという数値が80以下になると、なんらかの精神疾患、とくにパニック障害やうつ、強迫性障害などの症状が現れることが分かっているのです。

何かの障害までいかなくても、疲れやすく、やる気がでなくなります。ちょっとしたことで落ち込みやすくなり、他人の視線がきになるようになるなど、感情のコントロールにも影響します。

また、人によっては、精神面は特に問題がないけれど、
朝が不調で起きられない、肩こりや頭痛がひどい、肌が弱い、シミやアザができやすい、など身体に不調が出ることもあります。(橋本翔太が雑誌ご一緒した、脳外科の工藤先生は、どんな検査をしても原因がわからなかった頭痛や肩こりの持ち主が、鉄分摂取で回復したことから、鉄分補給による頭痛の治療をされています)

どんな問題が表出するかの個人差はありますが、これらの原因が鉄不足であることは、まだまだ知られていません。

橋本が詳細な血液検査でわかった、当初のフェリチンの数値は、35。男性の平均は120という数値であり、不定愁訴の現れる、ボーダーラインの80をとっくに下回っていました。この状態では、パニック発作や自立神経失調、ウツになってもおかしくな、それを精神論で乗り越えることなど、人間の機能としてできないことだったのです。

仮にいくら薬をのんで、発作を抑えたとしても、このフェリチンという数値が回復しない限りは、一生良くなりません。

それも知らずに、僕は自分の心の弱さを責めていました。こんなに心が苦しいのは、コントロールできないのは、何が、どんな心の問題のせいなのか、自分の何が悪いのか、情けない、くるしい。と。

しかしそれは、大けがをして歩けないのに、無理に歩こうとしているのと、同じことだったのです。
足を骨折してしまったら、いくら精神論や根性論を使ったところで、歩けないのと同じです。
身体の要因で、心がおかしくなってしまうことを、全く僕は知りませんでしたが、身体の状態に問題があるために、生きているのがつらくなる、それは弱さではなく、当たり前のことだったのです。

なぜ、このフェリチンが問題になるのかというと、体内でセロトニンを生成するときに、この貯蔵鉄が必要だからです。セロトニンの分泌が乱れることは、ご存知のとおり、ウツ病の原因のひとつ言われており、あらゆる精神疾患が、このセロトニンの不足によって起こるといわれているホルモンです。

朝日を浴びたり、リズム運動をしたり、ポジティブに物事を考えたりすることで分泌されることが分かっていますが、いくら分泌しようとしても、肝心のセロトニンを生成できない場合、何をやっても苦しみは軽減しません。普通の人なら、それらの工夫でセロトニンが出て、ストレスに立ち向かい、元気でいられるのに、フェリチンという体内の栄養素が足りないだけで、どんなに心や身体に工夫をしても、セロトニンは不足したままになります。

うつやパニックを治癒に導き、感情を安定させるために必須のセロトニンの生成には、
必要な栄養素をはじめ、身体のアプローチが大切だということ、
それが不足するだけで、セロトニンは生成されなくなり、やがて心を病んでしまうということを、どれほどの人が今の日本で理解しているでしょうか。

ほとんどの人が、
「心の問題、病気は、心が原因」と信じ切っていないでしょうか。
身体の機能が原因で起こる、心の問題があることを、知ってください。


あなたが、あるいは大切な人が、心の問題で苦しんでいるとき、それは「心」に問題があるのではなく、「身体」に問題があるかもしれないのです。

なお、橋本翔太は、分子栄養整合療法という、分野を基準としています。
この基準値は、通常の検査数値よりも、もっと細かく、厳しく見ていきます。

ちなみに、橋本翔太、通常の病院で検査すると、全て問題のない、健康優良児です。
不調の真っ最中も、まったく問題ありませんでした。(フェリチン数値も、10以下でも問題ないとしている検査会社や病院が多くあります)

このように、通常の病院では、問題がないことが、僕の問題が見つからないことの 大きな壁になりました。ドクターショッピングをしても、どこにいっても異常が見つからないのです。

栄養療法における血液検査は特殊で、数値チェックも厳しいのです。